Q07. インキの色・顔料
白インキには、次のような種類があります。用途に応じて使い分けて下さい。
色名 | 濃度・隠蔽性 | 用 途 | 注意事項 |
---|---|---|---|
1白 | 標準 | 表刷りで、光沢が必要な用途 | |
6白 7白 | 高濃度 隠蔽性 | 表刷り、裏刷りで、濃度・隠蔽性が必要な用途 | 1白より光沢低下 |
EXO白 | 超高濃度 高隠蔽性 | 調色専用品、工業用の溶剤型インキに設定あり (EXOインキ) | EXO白単独での使用は不可 |
上記以外にも、一部のシリーズには次のような特製品があります。
耐光白 | 屋外用。 チョーキング現象を起こしにくい。 |
---|---|
スーパーホワイト | 白は高濃度になると若干黄味になるので、増白剤を加えて補色した製品。 (ただし溶剤型のPC、SNAP、EXGに設定のあるスーパーホワイトは、分散剤により高濃度としたインキ。 EXO並の隠蔽性があり、且つ単独で使用可能。 増白剤は使用していないので、青味の色調にはならない) |
布用白 | ビニールインキに設定あり。 濃色の布地(綿布)に純白色を印刷するためのインキ。 EXO白とほぼ同等の濃度・隠蔽性。 →ビニールインキ特殊品のご紹介 |
HC白 | 一部のUVインキに設定のある、高濃度白インキ。 7白より隠蔽性良好。 薄膜に印刷する用途に使用。 |
標準品の SP 701白 及び NSP 7006白 は、他のシリーズの07高濃度白とほぼ同等の濃度・隠蔽性を持っています。
これらのインキシリーズでは高濃度・高隠蔽性タイプの白しか需要がありませんので、これを標準品として設定しています。
ともに仕上がりはセミグロスとなりますので、光沢が必要な場合には、オーバーコートクリアーの併用をお勧めします。
一つのシリーズの中に黄・赤系のほぼ同じ色相のインキが複数設定してあるのは、各々の耐候性に差があるからです。
各色の耐候性は、次の表及び耐候性一覧表にてご確認下さい。
(群青は光沢や物性についても差があります。Q07-06をご参照下さい。)
色名 | 一般色 | 耐候性色 | ||
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番号・色名 | 耐候性 | 番号・色名 | 耐候性 | |
青黄 | 03青黄、3青黄 | 4〜5級 | 13青黄 | 6〜8級 |
黄 | 02黄、2黄 | 4〜5級 | 14黄 (12黄) | 6〜8級 (5〜6級) |
金赤 | 5金赤 | 4〜5級 | 6金赤 | 6〜8級 |
赤 | 8赤 (9赤) | 7級 (4〜5級) | 38赤 (8赤) | 8級 (6〜7級) |
紅 | 17紅 | 4〜5級 | 18紅 | 6〜8級 |
群青 | 85群青、86群青 | 5〜6級 | 87群青 | 8級 |
等級 | 評価 | 屋外暴露可能期間の目安 |
---|---|---|
8級 | 極めて優秀 | 2年以上(2〜3年) |
7級 | 優秀 | 2年以下(1〜2年) |
6級 | 良好 | 1年以下(6ヶ月〜1年) |
5級 | ほぼ良好 | 6ヶ月以下(4〜6ヶ月) |
4級 | 普通 | 4ヶ月以下(2〜4ヶ月) |
3級 | 不可 | 2ヶ月以下(1〜2ヶ月) |
2級 | 劣る | 1ヶ月以下(2週間〜1ヶ月) |
×印 | 著しく劣る | 2週間以下(1〜2週間) |
金赤(Bright Red)は、黄口の明るい赤、オレンジに近い赤色です。
金色とは直接関係ありません。
浅葱(Sky Blue)は、一般的な色名では水色または空色と呼ばれる、明るく淡い不透明な青色です。
シアン(Cyan)は、ハーフトーンでのみ使用している色名で、淡い透明な藍色の事です。
それぞれ実際の色相は、カラーガイドにてご確認下さい。
又メジウム(Clear)は、無色透明の光沢型インキです。
ビニールインキの8赤と5金赤の耐候性は両方ともに4級のため、約2〜4ヶ月の屋外曝露で退色します。
耐候性が必要な用途では、18紅(耐候性6級、屋外曝露目安6ヶ月〜1年)や 6耐光金赤(耐候性7級、屋外曝露目安1年〜2年)を使用して下さい。
またEXG3508赤(光沢型、耐候性7級、屋外曝露目安1年〜2年)も屋外用として使用できます。
(ただし一般に耐候性の優れたインキほど価格が高くなります)
85群青は、黄口で鮮明な色相の群青色です。
この85群青には、各シリーズともに同じ「群青」という名称の無機顔料を使用しています。
この「群青」顔料の性質により、溶剤型インキは光沢が低下してセミグロス仕上がりになります。
ビニール86群青も、同じ「群青」顔料(赤口)を使用しています。
一方、UVインキでは85群青も光沢仕上がりになります。
85群青は、耐酸性・耐候性があまり強くないという性質がありますのでご注意下さい。
一方赤口の群青色である87群青は、45濃藍 80% + 25紫 20% の割合で混合した調色インキです。
従って他の色と同様の光沢・耐酸性・耐候性を持っています。
適当な原料(顔料)が存在しないためです。
藍・グリーン系の色は、フタロシアニン系の有機顔料を使用しています。
フタロシアニン系の顔料は、鮮明な色相を有し耐候性等の物性が優れています。
ただし透明性が優れているため、隠蔽性は良くありません。
フタロシアニン系以外の顔料で隠蔽性の良好な顔料も生産されていないため、藍・グリーン系の色はEXOインキ(高隠蔽性色)に設定がありません。
隠蔽性が必要な用途では、原色に白を少し加えて印刷して下さい。
この場合、隠蔽性は改良されますが、色相は少しくすみますのでご注意下さい。
ビニールインキの黒には、次のような種類があります。用途に応じて使い分けて下さい。
色名 | 特長 | 備考 |
---|---|---|
標準ビニール92黒 | マット型 標準黒 | |
標準ビニール90黒 | セミグロス型 | 旧PUBビニール90黒 |
玩具ビニール95黒 | マット型 ノンスパーク(無電導)タイプ | ウェルダー加工用 濃度や漆黒感は標準ビニールより劣る |
玩具ビニール97黒 | セミグロス型 ノンスパーク(無電導)タイプ | 同上 |
Qセット292特黒は、標準の290黒よりも漆黒感の優れた深みのある色相を持っています。
その分価格は高くなりますが、非常に美しい黒です。
尚、現在92特黒の設定はQセットインキにしかなく、他のインキシリーズでは特製品としても製造することは出来ません。
エクステンダーは艶消型のインキシリーズに設定してある無色透明のインキ(艶消型)で、カラーインキに混ぜて色を薄めるために用います。
光沢型インキでは色を薄めるのにメジウム(光沢型)が使用されますが、艶消型インキではインキの光沢を変化させないためにエクステンダーが使用されます。
一方艶消型のインキシリーズのメジウムは、主に金属粉や蛍光顔料などの特殊色材を使用するときのベースクリアーとして使用されます。
弊社ではカラー分解印刷用のハーフトーン色は、需要の多い一部のインキシリーズにだけ設定しています。
これ以外のインキシリーズにおいては、調色対応によりハーフトーン色を作ることが出来ます。
下記の調色配合目安をご参照下さい。
- HT イエロー(黄):メジウム 100部 + 13青黄 20〜40部
- HT マゼンタ(紅):メジウム 100部 + 18紅 10〜20部 (+ 16ピンク 0〜20部)
- HT シアン(藍):メジウム 100部 + 46藍 15〜30部 (+ 75グリーン 0〜5部)
- HT ブラック(黒):メジウム 100部 + 90黒 5〜15部
スクリーンインキに使用される顔料には、色により紫外線を多く吸収する性質を持つものがあり、これらの顔料をUVインキに使用するとインキの硬化を遅くします。
含有量が多い程この傾向は著しくなります。
従ってUVインキの濃度・隠ぺい性には限度があります。
溶剤型インキのEXOシリーズに相当する隠ぺい性を持ったインキは硬化不良となってしまうため、製品化出来ません。
調色をしたときに、それぞれの原色の硬化性は問題ないのに、調色インキの硬化性が低下する事があります。
これは顔料を組み合わせたときの紫外線の吸収と反射の性質によるもので、特に高濃度白と暗色系(黒、藍、他)との組み合わせの場合は注意して下さい。
蛍光インキは、鮮明な蛍光発色をする蛍光顔料を使用したインキで、ビニールインキとQセットインキに設定されています。
色相は、カラーガイドにてご確認下さい。
蛍光インキ(顔料)には、耐候性が劣る(×印:屋外暴露2週間以下)、着色力が低い、光沢が出ない等の欠点がありますので、ご使用の際には注意が必要です。
弊社では機能性を持った特殊な色材を使ったインキを、COLOSER(コロセル・機能性色素)インキと呼んでいます。
このシリーズには、COLOSER-BL、COLOSER-蓄光、COLOSER-PRISM(プリズム)、COLOSER再帰反射があります。
またFUNCOATメタミラーも特殊な色材を使ったインキです。
重金属類は、環境問題及び健康問題の点で使用が制限されるようになっています。
塗料業界では現在でも、黄色系には「黄鉛」、赤色系には「クロムバーミリオン」という重金属類を含む顔料を使用している例があります。
しかし弊社はスクリーンインキ業界の先駆けとして、1980年頃にこれらの顔料の使用を中止しています。
従って現在では弊社インキは全色無鉛性で、有害な重金属類を含んでおりません。
これに関する証明書(RoHS不使用証明書、NL規制証明書)やRoHS規制物質測定データ報告書を発行するサービスも行っていますので、必要なお客様は弊社営業部へお申し付け下さい。
(尚、工業用途の一部の黒インキ(PC8092黒, SNAP EXO黒, HIT EXO黒)には、酸化クロム・酸化コバルト系の焼成顔料を使用しています。)
弊社の耐候性一覧表は、各原色を標準条件で印刷した場合の性能を示したものです。
淡色の調色品や高メッシュ版で薄く印刷した場合などにはこれよりも耐候性が低下します。
特にパステルカラー(淡彩色)の調色インキでは大幅に低下します。
詳しくは技術資料「調色インキの耐候性について」をご参照下さい。
ビニールインキの色相はカラーガイドのグロス型インキの色見本と光沢の違いがあるだけでほぼ同じですが、Qセットインキは独特な色相を持っており、カラーガイドの色見本には適合しません。
開発当時の諸事情により、800シリーズPASインキの色番号は、他のシリーズと一部異なっています。
下記をご参照下さい。
827オレンジ | 標準オレンジ(耐候性5級) |
828オレンジ | 耐光オレンジ(耐候性8級)、特製品 |
815金赤 | 標準金赤(耐候性6級) |
805金赤 | 耐光金赤(耐候性7級)、特製品 |
891グロス黒 | グロス型黒 |
890黒 | マット型黒 |
インキの隠蔽性が不足している場合には、ご指摘のように生地の色に負けてしまい鮮やかな色の印刷できないことがあります。
隠蔽性の良いインキに変更するか、下層に高濃度白を印刷した上に色インキを印刷してください。
調色の場合には、EXO色をベースとした調色を行ってください。
黒地用の調色インキの場合には、下地色の影響を考慮に入れた色合わせ作業を行っています。
従ってインキの肉色がピンク色でも、実際に印刷した場合の仕上がり色はグレーになりますので、ご安心下さい。
APGインキは、最高級顔料使用色のみを設定した関係で、黄、金赤、浅葱、群青などが標準色に含まれていません。
しかしこれらの色は、簡単な調色で作成できますので、必要に応じてお試し下さい。
- 黄 = 青黄90 + 赤黄10
- 金赤 = オレンジ80 + 赤20
- 浅葱 = 白70 + 藍30
- 群青 = 濃藍80 + 紫20
次表のとおりです
グレード | 平均粒子径 (µm) | 最大粒子径 (µm) | 使用限界メッシュ | (パッド印刷適正) |
---|---|---|---|---|
スーパーファイン | 7 | 37 | 350 | ○ |
ファイン | 10 | (52) | 300 | ○ |
ミディアム | 16 | 74 | 270 | △〜○ |
ミディアムコース コース | 25 | 88 | 225 | ×〜△ |
エクストラコース | 27 | 125 | 150 | × |
注)パッド印刷では、刷版の彫りの深さによって使用可能なアルミペーストのグレードが決まります。
アルミペーストには、次のような種類があります。
リーフィングタイプ | 全種 |
---|---|
ノンリーフィングタイプ | 通常品 |
表面処理品 | |
樹脂コーティング品 | |
UV用 | |
JAグレード |
以上6種類のアルミペーストは、下に行くほど物性が向上します。
弊社では溶剤型インキの調色には「樹脂コーティング品」を使用しています。
UVインキには「UV用」及び「JAグレード」をお薦めしています。
これら樹脂コーティング品以上のグレードのアルミペーストで層間剥離が問題になることはありません。
一方通常品(JK-16,JK-20が該当)及び表面処理品のアルミペーストは、隠蔽性や光輝感の点では優れていますが、アルミが樹脂成分で被覆保護されていないために物性に難があります。
セロテープ試験を行うと表面層だけが剥離することがあります。
オーバーコートをしても、塗膜中にアルミが偏在して樹脂分の少ない層が出来ているため、層間剥離現象が起きます。
従って工業用途で物性を優先させる場合には、これらのタイプのアルミペーストを使用することはお勧め出来ません。
尚、同じタイプのアルミペーストの中で粒子径の違うものを比較すると、粒子径が小さいものほど表面積が大きくなるため物性が低下します。
物性の面では粒子径の大きなアルミの方が有利です。
UVインキ用は、粒子径を揃えて版の目詰まりを防ぐと同時に、ペースト中の溶剤分を減らして安定性を向上させています。
又、一部のUVインキ(#6200 UIM等)では高酸価のビヒクルを使用しているため、安定性の特に優れたアルミペースト「JAグレード」を使用する必要があります。
「UV用」及び「JAグレード」を溶剤型インキに使用することは、全く問題ありません。
アルミペーストは、「金色」「銀色」及び「メタリック色」の調色に使用する金属系顔料で、鱗片状のアルミニウム粉末を溶剤で錬ってペースト状にしたものです。
アルミニウムは化学的に活性である為に、次のような問題点があります。
○ 問題点
- 耐酸性、耐アルカリ性、耐候性、耐水性、耐湿性等の性能が一般の顔料よりも劣り、変色しやすい。
変色すると金属感が失われ、グレー化する。 - インキ中に高酸価のビヒクルが使用されていると、インキが増粘したりゲル化することがある。
- 水性インキに使用した場合に、水と反応して水素ガスを発生することがある。
弊社で使用しているアルミペーストはこれらの欠点を改良する為、前項で述べたように表面を樹脂コートした製品を使用しています。
その為、一般グレードのアルミペーストよりは、このような欠点が改良されています。
しかし樹脂コートも完全ではありません。
長期間貯蔵した場合などにはインキが変質する可能性があります。
安定な期間は、インキのシリーズ、アルミペーストの粒子径と添加量及びインキの保存状態などの影響で差が出ますので一概には言えませんが、約3ヶ月〜6ヶ月と考えて下さい。
アルミペーストを使用した調色インキには以上のような問題点がありますので、長期保存を避けなるべく早く使いきるようにして下さい。
一方、高酸価のビヒクルを使用したインキ(700シリーズSPインキなど)や水性インキ(アクアセットインキなど)では、アルミペーストを使用した調色インキを貯蔵することが出来ないので、調色インキにアルミペーストを添付する形で出荷し、使用時に混合して使用して頂く場合があります。
尚、金粉(ブロンズ粉)はアルミペーストよりも更に安定性が劣る顔料なので、調色には使用していません。
アルミペーストより安定な顔料としては「パール顔料」があります。
しかしパール顔料とアルミペーストは金属感(光輝感)、隠蔽力及び色相の点で差がありますので、使用可能な色は限定されます。
アルミペーストには導電性があるため、ウェルダー加工には適しません。
「パール顔料」を使ってメタリック色の調色を行って下さい。
また、弊社ビニールインキの特製色として、ノンスパークタイプの「NSシルバー」「NSゴールド」を設定しています。
FUNCOATメタミラーは、透明プラスチック材の裏面に印刷することにより、透明素材を通して鏡面仕上がりとなるインキです。
このインキには、特殊なアルミペーストが使われています。
形状は薄片状で、粒度分布2〜50µm、平均粒径18µmのノンリーフィングタイプのアルミペーストです。
粒径としては、ミディアムコースと同等ですが、粒子の表面及び端部を平滑に研磨してあり、非常にスパークル感が強くなっています。
これが塗膜中に整然と並ぶことにより、鏡面に近い仕上がりになります。