Q06. インキの性質・性能
「耐候性一覧表」に記載された各インキの耐候性の目安以上の耐候性が要求される用途では、オーバーコートクリアーの併用をご検討下さい。
各シリーズのカラーインキの上に、オーバーコートクリアーを印刷することによって、耐候性を向上させることが出来ます。
また紫外線吸収剤を含んだJELCON VS-10、VS-15、4700VX・改5-OCCは、耐候性向上効果が一段と優れています。
(参考資料→「 スーパーグロスインキ118紅の耐候促進試験」)
オーバーコートクリアー以外の方法としては、ラミネートフィルムの併用、透明材への裏刷りなども効果があります。
等級 | 評価 | 屋外暴露可能期間の目安 |
---|---|---|
8級 | 極めて優秀 | 2年以上(2〜3年) |
7級 | 優秀 | 2年以下(1〜2年) |
6級 | 良好 | 1年以下(6ヶ月〜1年) |
5級 | ほぼ良好 | 6ヶ月以下(4〜6ヶ月) |
4級 | 普通 | 4ヶ月以下(2〜4ヶ月) |
3級 | 不可 | 2ヶ月以下(1〜2ヶ月) |
2級 | 劣る | 1ヶ月以下(2週間〜1ヶ月) |
×印 | 著しく劣る | 2週間以下(1〜2週間) |
インサート成形用途などで使用されるインキでは、インキ皮膜の耐熱性を要求されることがあります。
一般にUV型、2液硬化型などの反応型インキは耐熱性が優れており、200℃以上の耐熱性があります。
一方溶剤型(蒸発乾燥型)インキの中で最も耐熱性が優れているのは、1700シリーズ HITインキで、耐熱性は約150℃です。
インサート成形では、耐熱性だけでなく深絞りに追随する伸縮性も必要です。
現在最もお薦めできるインキは、二液反応型の 3200シリーズ SIMインキ、及びUV型のレイキュアーUIM 6200シリーズです。
この他のインキでは、3100シリーズ FMインキ、9300シリーズ HIPETインキ、レイキュアーSL 6100シリーズ、レイキュアーPF 4200シリーズなども一部のお客様で使用されています。
2500シリーズ 遅乾性MIG-Nインキであれば耐えられると思われますが、弊社では確認していません。
貴社にて確認試験を行い、ご採用の可否を決めて下さい。
インキのサンプル依頼等に関しては弊社営業部までお問い合わせ下さい。
一般に、UVインキの硬化皮膜面に対する溶剤型(蒸発乾燥型)インキの接着性はあまりよくありません。
接着する可能性があるのは700シリーズ SPインキですが、皮膜の硬いタイプのUVインキに対してはSPインキでも接着性が十分ではなく、2液反応型インキしか接着しません。
弊社でもこれ以上は詳しいデータを持っていませんので、貴社にて確認試験を実施して下さい。
当社では1991年より、粘度単位を国際単位系(SI)へ移行しており、現在テクニカルインフォメーションを始めとする技術資料類では、SI単位により表記しています。
従来使用していた単位との比較は次のとおりです。
また濡れ指数や圧力・応力の表記についても、下記をご参照下さい。
従来 | SI単位 | 換算 | 備考 |
---|---|---|---|
P(ポイズ) | dPa・s(デシパスカル秒) | 1P = 1dPa・s | 1P = 1dyn・s/cm² = 1g/cm・s 1Pa・s = 1N・s/m² |
従来 | SI単位 | 換算 |
---|---|---|
dyn/cm (ダイン) | µN/cm | 10µN/cm = 1dyn/cm |
従来 | SI単位 | 換算 |
---|---|---|
kgf/m² | Pa | 1kgf/m² = 9.8Pa ≒ 10Pa |
kgf/cm² | kPa Ncm² | 1kgf/cm² = 98kPa ≒ 100kPa 1kgf/cm² = 9.8Ncm² ≒ 10Ncm² |
一般に、UVインキは膜厚で光沢の良好な硬化皮膜を形成するため、ラミネート加工の工程を省くことが可能な場合があります。
ただし仕上がりが同一になるわけではありませんので、事前の確認が必要です。
紙の印刷では、レイキュアーOP 4300シリーズ、レイキュアーCPO 6300シリーズ等のハーフトーンインキをお試し下さい。
レイキュアーGA 4100シリーズ を推薦します。
同インキは、耐摩擦性に優れた硬い皮膜を作るUVインキです。
(逆に膜の柔らかいUVインキとしては、レイキュアーPF 4200シリーズ、レイキュアーVX 4700シリーズ、レイキュアーM 4700シリーズ、レイキュアーSL 6100シリーズ等があります。)
UVインキ用添加剤JAR-33の使用をお勧めします。
JAR-33をインキに1〜3%添加することにより、UVインキの硬化皮膜の耐スクラッチ性、耐引っ掻き性が著しく向上します。
一般にUVインキは有機溶剤のような臭気のある揮発性物質を含まないので、低臭気型です。
その中でも特に臭気の少ないインキとしてはレイキュアーCPO 6300シリーズ及びレイキュアーOP 4300シリーズがあります。
インキに添加剤JAR-16を3〜5%添加して印刷することにより、接着性や耐水性が著しく向上します。
ただしJAR-16を添加したインキはポットライフが発生しますので、添加後12時間以内に使い切って下さい。
3100シリーズ FMインキ及び3200シリーズ SIMインキの主な用途は共通で、「インサート成形、インモールド成形用のポリカーボネートシート系及び処理PETフィルムへの印刷」です。
性能面では、SIMインキはFMインキよりも耐熱性に優れており、高温で成形する場合でもインキ膜が変色することがありません。
一方シリンダープレス等での高速印刷適性は、FMインキの方が優れています。
一口にインキの耐熱性・耐熱温度と言っても色々な意味を持っています。
- インキ膜のガラス転移温度、軟化温度
- 顔料成分の変退色温度
- インキ膜の変色温度、劣化温度
- のガラス転移温度(約40℃)以上の温度で積み重ねた印刷物を長時間保存すると、印刷物がブロッキングする可能性があります。
9000シリーズPETインキのガラス転移温度もほぼ同じですが、艶消し型インキのため耐ブロッキング性の点では9100PLシリーズよりも有利です。
又、軟化温度(約100℃)以上で印刷物のプレス加工などを行うと、印刷面に傷が付いたり剥がれが生じたりすることがあります。 - の顔料成分の変退色温度(100℃〜200℃)は、各色毎に差があります。
一般に耐候性に優れた顔料ほど、耐熱性も優れている傾向があります。
印刷物が後加工で加熱される場合には、耐候性色を選んでお使い下さい。 - のインキ膜の変色温度(約200℃)以上に長時間置かれると、無色や白色のインキが黄色から褐色に変色が進みインキ膜が劣化します。
短時間の加熱では問題ない場合もありますので、事前に確認して下さい。
技術資料「FMインキの皮膜性能改善方法」をご参照下さい。
APGインキのベース樹脂は2000シリーズ APインキと共通ですが、APGインキは最高級顔料だけを使用したシリーズで、特に耐候性が優れています。
各々のインキの耐候性は、耐候性一覧表によりご確認下さい。
またAPGインキは調色されることが多いため、調色安定性に注意して製造しております。
尚、APインキとAPGインキは混合して使用しても全く問題ありません。
APGインキの主剤は反応性が優れており、硬化促進剤を併用するとポットライフが短くなってしまいます。
特に硬化促進剤JA-E11はポットライフが極端に短くなってしまうため、APGインキに使用することが出来ません。
硬化促進剤JA-E111(マイルドタイプ)についても、使用を避けて下さい。
エピライト添加剤JA-1000をAPGインキや2000シリーズ APインキに使用すると、JA-1000が硬化促進剤として作用してインキがすぐにゲル化してしまいます。
従って、JA-1000をAPGインキや2000シリーズ APインキに使用することは出来ません。
7000シリーズ NSPインキに、エピライト添加剤JA-1000を添加して使用する事は可能です。
しかし硬化剤JA-960等を添加した場合に比べて接着性・物性の向上効果が充分ではありません。
尚、エピライト添加剤JA-1000と硬化剤JA-960等を併用することは出来ません。
インキがすぐにゲル化してしまいます。
水洗いするのは問題ないと思いますが、溶剤洗浄した場合にはインキが剥離する可能性がありますので、お勧めできません。