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  • 総合資料

スクリーン印刷における機能性インキ

印刷インキのなかで、光学的機能や電気的機能などの物理的機能、耐薬品性や生化学的機能などの化学的機能、又は特殊な印刷仕上りを持つ表面加飾機能などを特別に付与されたインキを“機能性インキ”と呼んでいる(表1参照)。

表1.機能性インキの分類
分類作用機能性インキの例
物理性光学的紫外線発色
蓄光
紫外線カット
液晶バックライト
ブラックランプ発色
絶縁
導電
EL
磁気
熱・温度的発泡
示温
赤外線輻射
インサート成形
応力的サンドブラスト
マスキング
ネイルスクラッチ
滑り止め
粘着剤
転写用
化学的薬品的エッチング
アルカリ剥離
生化学的抗菌
防曇
吸収・吸着・反応吸水性
筆記適正
ジェットプリンター受容
酸化腐食等
表面加飾顔料・フィラーによる加飾疑似エッチング
シボマットクリアー
ノングレア
ソフト感触
鏡面メタリック
立体感・光沢感厚盛印刷用
浮き出し
点字用
スポットクリアー
自発的な微細模様形成結晶模様
縮み模様
クラック模様
サンゴ状模様

これらの機能性インキは’80年代に開発された物が多いが、’90年代になって市場性が無くなり、消えていった製品も少なくない。

その最大の原因は、特に発色や変色の機能を持つ機能性顔料に代表されるように、コスト高にあったと言ってよい。

’80年代には、ニーズからではなくシーズ的にインキメーカーから発表されたものが多かった事も、定着しなかった原因の一つである。

しかし、最近は滑り止めインキ、ジェットプリンター受容インキ、鏡面メタリック等のニーズに応えた実用的な用途での機能性インキが多くなっている。

ここでは、実際にスクリーン印刷で応用されている機能性インキの一部を紹介する。

1.物理的作用を持つ機能性インキ

1.1.光学的作用

光学的な作用を持つ機能性インキとして、紫外線発色インキ(COLOSER BL)がある。

太陽光や一般の照明のもとでは白色にしか見えないが、ブラックライトなどの紫外線を照射すると鮮明な蛍光色を発する無機蛍光体を配合したインキで、緑、黄、橙、赤、ピンク、紫、藍、白等の蛍光色への変化を示す。

ディスプレイ関係や偽造防止用、壁画などへ応用されている。

蓄光顔料を用いた蓄光(夜光)インキもこの分類の製品である。

蓄光インキは、太陽光や電灯などの光エネルギーを吸収蓄積し、その蓄積エネルギーを暫時放出して発光する。

つまり消灯後の暗闇で発光する。

従来その発光時間はせいぜい20〜30分位であったが、最近は従来の8〜10倍の発光輝度と発光時間を持つタイプの蓄光顔料(COLOSER 蓄光)が開発されている。

発光色としては、グリーン、赤、ブルーがあり、残光輝度をより高めるためには、蓄光顔料の添加量を樹脂分に対し1:1位と多くして、かつ厚膜になるように100〜180メッシュの版で印刷する。

また色変化をするものでないが、紫外線を遮断する光学作用を持つインキに、UVカットクリアー(JELCON VS)がある。

このインキは紫外線吸収剤を樹脂に結合させたタイプなので、安定性に優れ長期間に渡って初期の紫外線吸収率を維持し、素材の劣化原因となる紫外線を遮断する。

パッケージへの印刷による商品の保護、蛍光色の退色防止、その他紫外線による色の退色や素材の劣化防止の目的で使用されている。

1.2.電気的作用

この分類のインキには、銀ペースト・カーボンペースト等の導電インキや絶縁インキがある。

導電インキのカーボンペースト(JELCON CH-8)は、ポリエステル樹脂ベースの蒸発乾燥型インキで体積抵抗値が1~2×10-2Ω·cmと他品と比べて非常に優れた低抵抗性を示す。

通常はメンブレンスイッチ回路等の接点部や銀回路のマイグレーション防止の保護に使用されているが、低抵抗と安価であることを生かしてダンスゲームマシンのステップ用シートのスイッチ回路自体にも使用された。

また銀等の導電インキに比べて高抵抗なので面状発熱体の印刷に使用される事もある。面状発熱体の応用例としては、稲の苗床育成促進のための保温材等がある。

これら導電インキの回路間の短絡防止や汚染防止のために、絶縁コートが使用される。絶縁インキには溶剤型とUV型があるが、UV型絶縁インキ(JELCON IN)は、膜厚が大きく皮膜物性も良いので絶縁抵抗の向上、マイグレーションの防止に有利となり主流になっている。

1.3.耐熱的作用

曲面形状のメンブレンスイッチ表示部の製造法としてインサート成形が取り入れられている。

インサート成形は、図1の様に印刷されたフィルムを金型の中に組み込み、成形樹脂を流し込んでフィルムごと一体成形品とした物である。

フィルムと成形樹脂という異種の樹脂を一体化させるために、フィルム面側に接着バインダー層を必要とする。

インサート成形に用いられるインキは、成形樹脂の流し込みに耐えられる耐熱性(180℃以上1分間)とエンボス加工可能な柔軟性を有する二液反応型インキ(3100シリーズ FMインキ)が使用される。

接着バインダーは、熱に溶融する熱可塑性樹脂を使用したクリアーインキ(IMDバインダーインキ)が用いられる。

1.4.応力的作用

レジストインキと似た機能の応用で、サンドブラスト処理用のマスキングインキ(JELCON GEC)がある。

これは図のように、サンドブラストを行なう面以外の部分をマスクしてサンドブラスト処理後、マスク部を温水などで剥離する。

マスクされていない部分の表面が荒され、所望の画像が形成される。

サンドブラスト用マスキングインキは、インキ膜が厚く弾性があり、剥離し易いことが要求されるので、弾性のあるUVエラストマー型インキとなっている。

ガラス食器やステンレスドアなどのサンドブラスト用に使用されている。

UV硬化樹脂の内部応力を非常に高めかつ特殊な離型剤を配合して、接着機能を極端に低下させ剥離を非常に容易にしたストリッパブルマスキングインキ(JELCON RIP)もある。

印刷皮膜を剥がすときでも、途中で切れないような引っ張り強度の強い強靱な皮膜を形成する。

塗装等の部分的なマスキング用途や、材質面や印刷面の一時的な保護目的の保護フィルム代替用として使用される。

弱粘着効果を持つUVインキ(JELCON USL)も開発されている。

この弱粘着剤を印刷したフィルムは、貼って剥がしてと繰り返し使用でき、基材面にも粘着剤の後残りがしない。

更に粘着効果を弱くして、タックを殆ど感じられない程度にすると滑り止め効果の働きが出てくる。

UV弱粘着型滑り止めインキの応用例としては、パソコンのマウスパッドの滑り止め裏面印刷がある。

2.化学的作用を持つ機能性インキ

2.1.薬品による作用

焼酎等のPETボトル容器にはUV印刷が行われているが、リサイクル法の制定により飲料ボトルの再資源化が義務づけられ、リサイクル処理に対応したインキが必要となった。

再生処理時に不必要な印刷インキを除去しなければならないので、再生処理時のアルカリ溶液処理工程でアルカリ膨潤剥離ができ、かつ耐水性・耐中身性を有するPETボトル用UVインキ(PES-AKシリーズ)が開発された。表2.物性を参照。

アルカリ溶液と親和性の高い基を持つ特殊モノマーの導入でアルカリ溶液が皮膜中に容易に浸透し、その膨潤応力で皮膜を短時間で剥離させている。

フレーム処理によるPETボトルの前処理と、インキへの接着向上剤JAR-18の添加で、接着性も強固である。

表2.PES-AKシリーズインキ物性表
試験項目方法・条件[1]結果
接着性クロスカットセロテープ剥離試験100/100 合格
重ね刷り性3色重ね刷りでの接着性100/100 合格
耐アルコール性99.5%エタノール使用
浸漬24時間
100/100 合格
耐温水性40℃温水使用
浸漬24時間
100/100 合格
耐候性サンシャインウェザーメーター
200時間
異状なし
アルカリ処理1.5% NaOH水溶液
85℃で処理
単色30秒で剥離
4色重ね刷り2分で剥離
  1. 被印刷物:処理PETボトル(ぬれ指数65dyn/cm2

2.2.吸収・吸着による作用

情報記録媒体として用いられるCD-RやCD-RWは、使用者がメディア表面にジェットプリンターや筆記具で印字表記が出来なければならない。

この用途目的に応じた印字適性を付与したUVインキ(RCDインキ)が開発されている。

RCDメジウムは、親水性バインダーに親水性微粉末や染料吸着剤等を配合してある。

これをメディア表面に印刷してUV硬化させると、ジェットプリンターの水性インキや水性・油性筆記具等での印字が可能になる。

印字後の滲みが少なく乾燥性も速い。

3.表面加飾用機能性インキ

UVインキは、皮膜硬度、厚膜性、光沢、耐摩擦性などの点で、蒸発乾燥型インキでは得られない優れた表面加飾効果を生み出す。

そのため表面加飾にはUVインキが用いられる場合が多く、ノングレアーや凝似エッチング、盛上げ印刷、耐スクラッチ性の良い艶消加工など多種の表面加飾用クリアーがある(表3参照)。

表3.表面加飾用クリアー一覧
品名特長
マットクリアー疑似エッチング
ノングレア印刷用
強いチキソトロピック性
紗の目の再現性良好
透明マットクリアー透明性良好
疑似エッチング
ノングレア印刷用
高粘度
HFTマットクリアーフラットなマット仕上げ用
DP-1メジウムランダムな表面
シボ加工状の印刷シボ感が大きい
耐スクラッチ性が良好
UF-1メジウムDP-1の微粒子タイプ
シボ感がやや小さい
DP-1に似た仕上がり
UB-1マットクリアー細かいシボ状のマット仕上がり
高密度
UB-2マットクリアー細かいシボ状のセミグロス仕上がり
低密度
RL-A厚盛メジウム盛り上げ印刷(膜厚印刷)用
インキ被膜が硬い
厚い材質向け(4100 RL-A)
RL-B厚盛メジウム盛り上げ印刷(膜厚印刷)用
インキ被膜がやや柔らかい
薄い材質向け(4100 RL-B)
オーバーコートクリアー強光沢
レベリング優秀
オフセット印刷への光沢付与
(4300HG、NOP)
FG-20
FG-5 厚盛クリアー
強光沢
レベリング優秀
オフセット印刷物への光沢付与
部分厚盛り
高速印刷性良好(4300FG)
FG-30
FG-3 厚盛クリアー
オフセット印刷物の部分厚盛り
半自動印刷機用高粘度タイプ(4300FG)

これらの機能は、インキ中のフィラー(無色透明粉末)の性質によるもので、ウレタンビーズ等の樹脂ビーズやシリカ系等の様々なタイプが使用されている。

また最近、ホログラムフィルムの微細片を色材として使用したインキ(COLOSER PRISM)が登場している。

ホログラム特有のプリズム効果により、虹色に輝く宝石を散りばめたような美しい仕上がりが得られる。

自発的な微細模様を形成するインキとして、UV硬化型でサンゴ状模様を形成するインキ(FUNCOAT BCP)がある。

このインキは通常のベタ印刷を行うだけで、印刷と同時に発泡とランダムな割れめを作り、立体的な美しいサンゴ状模様を瞬時に形成する。

このインキは、金・銀箔紙に印刷すると非常に効果的な仕上がりが得られる。

溶剤系では、熱硬化型インキで硬化時に部分的に縮みと平滑部を交互に形成して結晶模様に見えるインキ(FUNCOAT CL-3)がある。

4.機能性インキの今後

スクリーン印刷は、いろいろな素材や形状のものに印刷出来ることと厚膜の印刷が出来るという、二つの大きな利点がある。

これらの利点は機能性スクリーン印刷の分野においても、機能性を付与しやすい特徴として生かされている。またこれらの利点を活かした上で、さらに製品の高度化や新たなニーズに対応する技術開発も積極的に進められている。

これからも多くの特殊な加工目的や機能を要する用途が出現すると考えられるが、これらの新たなニーズに応える機能性インキが必要となり、その都度開発されてゆくに違いない。

弊社では、表1、表3に示した以外にもいろいろなタイプの機能性インキを開発済みである。

しかし前書きで述べたような理由により、一般向けには商品化していなかったり、また廃止の扱いになったインキが多くある。

この中には新規用途に応用できるインキも多いと考えられる。

興味のある方は、弊社営業部又は技術部まで問い合わせて頂きたい。